インドで沐浴するのは危険だとよく耳にする。その水質の悪さから、足をつけるだけでも腹痛などの体調不良はおろか、感染症のリスクが高まるとすら言われる。そこまで汚染した川や海とはいったい…。実際に足を運んでみた。
・ベンガル湾に浮かぶ半島へ
筆者が訪れたのは、インドのタミルナードゥ州に属する半島の町、ラメスワラム(Rāmeswaram)。インドの聖地とされる「四大神領」(チャトルダーマ)のひとつといわれる寺院があることから、年間を通して、多くの巡礼者が訪れる神聖な地だ。
朝日が昇るころベンガル湾で沐浴をし、そのあと徒歩3分圏内にある寺院へ参拝するのが、定番のコースという。そこでベンガル湾から徒歩5分ほどの宿に泊まった筆者は、朝6時に起床してさっそく海辺へ向かった。
・早朝とは思えないベンガル湾の光景
先述の沐浴を終えた人が参る寺院「ラーマナータスワーミー寺院(Ramanathaswamy Temple)」は、ヒンドゥー教の最高神シヴァにまつわる重要な聖地。海への道中にあったのだが、6時過ぎの時点で、すでにちらほら巡礼者の姿がみえる。
海に到着すると、すでに100人近くが沐浴していた。静かに一人で水を浴びる者もいれば、幼子の手をひいて沖へと向かう者もいる。だがその水は、“噂”どおり濁っており「よく入れるな」というのが筆者の率直な印象だ。しかし顔をしかめる筆者の目の前には、粛々と水で身体を濡らす者や、はしゃいだ様子で談笑しながら身を清める者が大勢いた。
・海にみるインドと日本の大きなギャップ
その瞬間、当然のことにあらためて気づいた。筆者が暮らす日本には海も温泉もプールもあれば、各家庭にバスタブ、少なくともシャワーか蛇口はある。しかし宗教観に基づいた日々を暮らす彼らにとっての沐浴とは、肉体の病の原因とされる、魂霊にしみついた罪穢をはらうための“儀礼”。それと同時に、居住環境に水源がない人にとっては、顔を洗い口をすすぐという“日常の一コマ”なのだった。
だからわれわれも沐浴をすべきという話ではない。免疫のない者がこの水にふれるのはおそらく、非常に危険だ。ただ「汚い」と避けて見向きもしなければ、インドという国が遠ざかる――そう感じた。この水は、そこで暮らす人々にとっての生命線なのだから。
もっと詳しく読む: インドで沐浴は危険だ! と言われているが実際どうなのか?(Photrip フォトリップ) https://photrip-guide.com/2016/10/28/india-mokuyoku-column/