サウジアラビアで開催されているハッジ・ハッカソン。従来のハッカソン系イベントのなかでも特殊で、なんとサウジアラビア王国が外国人参加者の旅費を全額負担。しかも飛行機はビジネスクラスを提供するなど、あまりにも豪華なハッカソンと言われています。
・日本人女性がハッカソンに参加!
今回は、そんなハッカソンに参加している日本人、フランジア社の熊野さんにインタビュー取材を慣行。いったいどんなイベントだったのか、詳しくお話を伺いました。インタビュアーは鷹鳥屋明です。
鷹鳥屋: 前回からありがとうございます。熊野様のチームは今回のハッジ・ハッカソンでどのような発表をしましたか?
熊野: はい、まずハッジ・ハッカソンはラウンド1、ラウンド2を経て決勝戦を行われ、そこからベスト3が選ばれるという流れになっています。各員の発表時間は2分間になります。
私が所属する「TEAM WASABI」は世界各国から巡礼にくる人たちのために「外国人巡礼者の言葉の問題」を解決するため、自分の各種情報が入ったQRコードのリストバンドをアプリにかざすと自分と同じ言語を話すエージェント(通訳者)と繋がり、自分の伝えたいことを現地のスタッフに代わりに相談してくれるアプリを開発しました。
この発表をわずか2分の間で行わないといけませんでした。我々のチームのアクシデントだったのですがプレゼンのデモ用にメンバーのスマホのケースをハサミで切ってQRコードのリストバンドを作ってみたのですが、このサンプルを清掃員の人にゴミと間違えられてしまいました。プレゼン直前にこれは致命的でしてフォローするのがとても大変でした。
余談ですが、1st roundのプレゼンが行われるプレゼンブースでもやっぱりWi-Fiも有線もないのでアプリを起動できないことがわかり、急いで実際に動かしてる様子を動画にしてアナログでプレゼンしました。
鷹鳥屋: 他の日本チームの動向はどのようなものでしたか?
熊野: 日本からは全部で5チームが参加しておりました。あるチームはハッジで発生するゴミ問題に着目しました。ハッジに来た人々が路上にゴミをポイ捨てせずにゴミ箱へ捨てるようにするため、ゴミとゴミ箱の写った写真を送ると、周辺のお店で使えるクーポンを配布する、というWebサービスを開発しているチームがありました。
唯一、第二ラウンドへ進んだ日本人チーム(全員18,19歳の大学生チーム)は巡礼で大きな問題になっている脱水症状を減らすため、天気予報などと連携して水分補給のタイミングを計算・教えるアプリを開発しました。他にも多国籍のチームが様々なサービスをプレゼンしていました。
鷹鳥屋: 日本チームの健闘について教えてくださりありがとうございます。授賞式の様子はどのようなものでしたでしょうか?
熊野: 今回のハッジ・ハッカソンで優勝したのはサウジアラビアの女性チーム「Turjuman」になります。で、彼女たちのプロダクトは「ハッジで起こる言葉の壁をなくす」をテーマにしたオフラインでも使える翻訳機能を搭載したアプリを開発。
私たちのチームとコンセプトが同じですが、オフラインでも使えること、翻訳の性能が高い点が見事でした。 彼女たちの優勝が決まった瞬間、会場は豪快な花火に(室内なのに!)包まれ、会場は大盛り上がりでした。
女性がこういう大会やビジネスの場面で活躍できる機会は本当に少ないようで、他のサウジの女性参加者も自分のことのように彼女たちの優勝を喜んでいました。
まだまだ女性の活躍が少ないところでも、こうして女性が自分の力で成功を掴んでいくのをみて、同じ女性として心が動かされました。優勝賞金の100万サウジリヤル(日本円で約3000万円)は彼女たちが手に入れることになりました。
鷹鳥屋: 他にはどんなチームが勝ち残りましたか?
熊野: ラウンド1、ラウンド2を勝ち残り決勝までに勝ち残ったのは全部で10チームになります。 ハッジ専用の写真SNSアプリなど、多彩なサービスがステージ上で紹介されていました。
鷹鳥屋: 上位に入った他のチームはどのようなサービスを行ったチームでしょうか?
熊野: 2位に選ばれたのはハッジに特化したオンライン決済サービス「ハッジ・ウオレット」というサービスになります。Visaカードと連動した決済などを簡略化することにより混雑をなくすという目的で作られました。こちらの優勝賞金は1500万円になります。
3位に選ばれたのはアルジェリアのチームで地図と顔認証システムを組み合わせた所在地確認のアプリになります。
鷹鳥屋: 決勝戦全体の様子はどうでしたか?
熊野: Apple cofounderのSteve Wozniak氏とTech Crunch編集長のMike Butcher氏も審査員として参加し、各プレゼン後はハイレベルな質疑応答が行われていました。プレゼンもチームによって英語だったりアラビア語だったりと改めてグローバルさを感じました。
我々「TEAM WASABI」のチーム全員勝つつもりでプレゼンに臨んだので、正直悔しい気持ちでいっぱいでした。今回の敗因の一つとして、圧倒的にハッジに対する知識が不足していたこと。現地では実際に何がおきて、どんな課題があるのかの肌感覚レベルで持てていませんでした。
もし来年のイベントがあれば今度こそは十分に知識とアイディアを蓄えて、非ムスリム初の優勝者になりたいとおもいます。「TEAM WASABI」のKeita Matsuura、 Toru Kuniyoshi、 カルカタウィ モハメド、 Reiji Kobayashiの皆で組んだこのチームは本当に良いチームでした。サウジで会えて良かったです。
サウジアラビアでの日本人女性は珍しいようで、ハッカソン参加者や現地のメディアにたくさん声をかけて頂きました。
「日本人と会うのは初めて!日本はサウジとどう違うのか?」「どうやってサウジまできたのか?サウジは好きか?」「日本語では私の名前をどう書くの?」などといった質問をたくさんうけ、お話できたのがとても楽しかったです。
鷹鳥屋: 今回のイベントに参加できてどうでしたか?
熊野: フランジアという会社にいたのでここで活躍できましたと思います! 常に日本だけではなく、グローバルに意識を向けることをフランジアで教わりました。
今回のイベントも、実施が平日どまんなかにも関わらず「みんな仕事で忙しいだろうけど、こんな機会は滅多にないので、参加できる人はぜひ参加してほしい」と社長自ら社員へアナウンスしてくれる、そんな懐の深さがあったからこそ参加できました。
いち日本人として、今後どう海外で活躍できるか、爪痕を残せるか、それを日本に還元できるかを考えて今後もフランジアの一員として切磋琢磨していきます。
参加人数、規模の大きさでギネス記録にもなった今回のイベントに今回参加の機会をくださったハッジ・ハッカソン運営チームにも感謝です、頂いたこの貴重な経験を糧に、もっと世界に貢献できることをしたいです。
もっと詳しく読む: サウジアラビアのハッジ・ハッカソン1位決定! 優勝賞金3000万円は誰の手に!/ 参加者インタビュー(Photrip フォトリップ)
(C)Miho Kumano / 鷹鳥屋 明