『海新山』は、東急東横線の学芸大学駅と祐天寺駅のほぼ中間地点にあり、なかなか行きにくい場所にある。
店舗の入り口がまるでカラオケパブのようで、入るのに躊躇してしまうのも事実だ。ラーメン屋としてみた場合、あまり美味しそうには見えない店構えである。
よって、ここに来店するお客さんは、好奇心が旺盛な人か、怖いもの見たさという人が大半を占めると思われる。それと、実はこの『海新山』はラーメン屋ではない。古代中国料理である。
筆者 どの料理が人気ありますか?
店主 超コラーゲンラーメンと餃子なんてどうですか?
筆者 ち、超……。それがオススメ料理なんですか?
店主 そうです。餃子はいかがですか?
筆者 今回は普通のコラーゲンラーメンだけでいいかなー。
店主 餃子もどうでしょう?
筆者 まずは普通のコラーゲンラーメンでいいです。
店主 そうですか。餃子もどうでしょう?
筆者 ……じ、じゃあ餃子もください。
店主 あいよ。
筆者 ……(店主、プルプル震えてるけど大丈夫かなー)。
「超」という部分と「コラーゲン」という部分が一体何を示すのか不安にかられながら、店主が調理をするのを眺めていると、なにやら店主が不気味なプルプルしたゲル状の物体を持ってきた。
店主曰く「これがコラーゲン。健康のモト」なのだそうだ。あまりに不気味な物体なので、むしろコラーゲンを入れないで欲しいと心から思ったが、コラーゲンラーメンからコラーゲンを取ったら、ただのラーメンになりかねない。自分の身を削ってプルプルした物体にチャレンジすることを決めた。
店主 本当は超コラーゲンを注文しないと、プルプルは見せないんだよ。
筆者 あー、そうなんですか。それはなぜですか?
店主 次にまた来店したくなるでしょ? 今回見れなかったら。
筆者 あははは……。
ラーメンはもとより、お冷まですべてがNASAで開発された水を使用している。明確に説明すれば、NASAが開発した浄水システムを採用している浄水器で水道水を濾過し、その水をスープやお冷に利用している。
つまり、もともとは水道水なわけで、ミネラルや水の硬度は水道水と同じということだ。ミネラルウォーターや湧き水を利用しているラーメン屋とは別と考えておいたほうがよいだろう。
ちなみに、「古代中国料理なのにどうしてアメリカNASAの水?」という店主への突っ込みは暗黙の了解で禁句とされている。しかし正直なところ、水道水とNASAの水の味の違いがわからなかった。もしかして私は味盲なのだろうか!?
店主によると、『海新山』のラーメンは健康の源なのだという。いつも食べていれば、医者いらずで生活できるらしい。店主自身も、一度も医者に行ったことがないという。健康過ぎて、年が寄ってからも歯医者にも目医者にも行かないらしい。
しかし、店主に歯がないことは禁句である。一度も医者に行かないというのは、病気になっても病院に行かず、気合と根性で痛みを乗り切ったという感じもしなくもないが、禁句なので突っ込めない。
さっそくコラーゲンラーメンを食べてみた。スープが酸っぱい!! なんじゃこりゃあああああ!! でもまあ、慣れてくれば、そんなに悪くはないかな……。麺は……、普通としかいいようのない味だった。コシもさほどなく、なんとなくこのスープには合ってない気がした。それもそのはず、その原因は次の店主の発言で理解することができた。
「今日は麺がなかったからそこらで買ってきたんだ」
……って、そこら辺で買ってきた麺を使ってたのか!!しかも麺がなかったって、ここラーメン屋なのに!!プロのラーメン屋であれば、納得のいくスープ、麺、具材が揃っていなければ、納得のいくラーメンを作ることはできないはず。「そこらへんの麺」ってそんなのアリなのかーッ!? 「そこら」が「どこら」なのか聞くのが怖かったので、それ以上は聞かなかった。
まあ、結論から言えば、ラーメン美味しくはある。また、超コラーゲンラーメンを食べてからというもの、肌がツヤツヤしてきた気がする。気のせいかもしれないが、健康ではある。不気味さはあるものの、渡辺満理奈も常連の店らしいし、一度は訪れたい店であることは間違いない。
後日、色々とインターネットなどでこの店を調べたところ、私のほかにも「そこらで買ってきた麺」を使用されて嘆いている人がいた。……いいのか?
店名:海新山
業種:古代中国料理
住所:東京都目黒区五本木2‐53‐8
営業時間: 12:00~15:00/18:30~22:00
定休日:水曜
席数:13席(カウンター3席、テーブル10席)
※記事内容は取材当時の情報です