タイは旧正月をソンクラーンと呼んでおり、毎年4月13日から15日にかけて、国民が新年を祝う。ソンクラーンは「水かけ祭り」とも呼ばれており、互いに水をかけあって、相手の幸せを願う行事となっている。
・水かけ祭りの過熱化
もともとは、少量の水を相手にかけ、ささやかに幸せを願う行事だった。しかしここ数年、海外にも水かけ祭りの名が広まり、欧米から多くの観光客がやってくるようになった。そのうち「水のかけ具合」も過熱化し、強力な水鉄砲や放水車で人々を撃ちまくる、エンターテイメント化が進んでいる。
・ルール
水かけ祭りには暗黙のルールがある。水をかけられても怒らない、商売人には水をかけない、食べ物には水をかけない、警察官には水をかけない、お坊さんには水をかけない、店内でやらないなど。スーツ姿のビジネスマンやOLにもかけない傾向にあるが、かけてはダメという決まりはない。
・どこで参加する?
水かけ祭りはタイ全土で開催されているが、首都バンコクでエキサイティングな水かけ祭りに参加したいならば、3つの拠点をおさえておけば完璧だ。ちなみに、水かけ祭りは大晦日からフライングでスタートしている。
<伊勢丹前>過激度: ★★
伊勢丹(セントラルワールドプラザ)の前には広場があり、そこで企業が開催する水かけイベントが楽しめる。ギュウギュウになるほど人がいるわけでもないため、適度な賑やかさのなかで水かけ祭りを楽しめる。人体に無害の泡を噴射するコーナーや、水が天井から吹きかけられるコーナーもあり、伊勢丹に入ればトイレも使用できるため、非常に便利。
最寄駅: スカイトレインのチットロム駅から徒歩約5分
トイレ: 伊勢丹またはセントラルワールドプラザのトイレが無料で使用できる
[map_card][map addr=”Centara Grand and Bangkok Convention Centre”][/map_card]
<シーロム地区>過激度: ★★★★
タイ人の冷水ぶっかけ、欧米人の強力な水鉄砲放射、道路に特設されたアーチ型の放水器、消防局の放水車、あらゆる水かけの洗礼を受けることができる。世界中から人々が集まるため、酸素不足を感じるほど高密度な状態になる。
最寄駅: スカイトレインのサラデーン駅、または地下鉄シーロム駅から徒歩圏内
トイレ: ホテル『デュシタニバンコク』、または商業施設『シーロムコンプレックス』のトイレが清潔で使いやすい。どちらも無料。
[map_card][map addr=”Silom Complex”][/map_card]
<カオサン通り>過激度: ★★★★★
欧米人が多いだけでなく、狭い通りに大勢のシューターが集まるため、一度通りに入ったら長時間抜け出せない可能性がある。そのぶん大量の水をかけられ、エキサイティングな体験をする事ができるが、それなりの覚悟はしておこう。カオサン通りに隣り合わせてワット・チャナソンクラームと呼ばれている寺院があり、その側面を走る路地は、穏やかな雰囲気のなか水かけ祭りを楽しめる。
最寄駅: 水上バスのプラアーティットピアー駅から徒歩10分
トイレ: ホテルが宿泊客にしかトイレを使わせないケースもあるため、マクドナルドやバーガーキングなどのトイレを使用。すべて無料。
[map_card][map addr=”Khaosan Rd Khet Phra Nakhon Krung Thep Maha Nakhon”][/map_card]
・準備
水かけ祭りは「水をかけられても怒らない」のがルール。たとえ所持品が汚れたり壊れたりしても、相手を責めるのは間違い。そういう場に「何の対策もせず出てきてしまった自分」が悪いのだ。
<貴重品>
スマートフォン、カメラ、パスポート、サイフなどは絶対に防水対策をしておこう。貴重品はジップロックなどの防水ビニールに入れておき、できれば乾燥剤も1~2袋入れておくと安心。特にスマートフォンは防水ケースに入れないと高確率で故障する。
<バッグ>
バッグは完全に防水のものか、もしくは完全に水を通す材質のものにしよう。防水であれば水を通さないので安心。防水バッグがない場合は、逆に水を通しやすいバッグのほうがよい場合もある。バッグの中に水が入ると、水槽をかついで歩いているような状態にもなりかねないため、どうせなら水をどんどん通しまくるバッグのほうが、水をため込まずに落としてくれるので良かったりもする。
<服装>
できるだけ薄い生地を使用したシャツを使用し、下は半ズボンかホットパンツ系のものがよい。乾燥しやすい生地を選ぶのも重要。厚い生地、長ズボン、スカートはオススメできない。動きにくく、水を大量に吸収し、乾燥しにくいためだ。
<撮影>
防水カメラなら問題はないが、スマートフォンで撮影する場合、必ず防水ケースに入れた状態で撮影しよう。防水ケースの選定も慎重にいきたい。スモークがかかっていない、クリアで透明な防水ケースを選ぶこと。表も裏も透明なものを選ぶこと。それを首からさげて持ち歩こう。
<お金>
紙幣の入った財布は防水ケースの中に入れ、小銭だけをズボンのポケットに入れておくと便利。10バーツの硬貨を100バーツほどポケットに入れておけば、とっさの買い物に便利だし、財布を取り出してぬらしてしまう危険を減らせる。財布はホテルの貴重品の金庫に入れておくのも手。
<水>
水鉄砲に入れる水がないと、水かけ祭りの楽しさが半減する(?)。いつもなら無料で得られる水だが、この期間だけ、5~15バーツほどの価格で水が売られており、それを買って給水している人たちがいる。
しかし、水を無料で給水できるポイントがいくつか設置されており、そこで水を補給する事ができる。たとえばシーロム地区では、大通りの入り口に付近に給水タンクが用意されている。なかには、トイレの水を入れている人もいるようだ。
・移動
水かけ祭りの期間中は、当たり前だが道路が水浸しになっている。泥を顔に塗ってくる人もいるため、泥だらけになっている道路もある。それゆえ、タクシーやバイクなどの交通機関には注意が必要だ。
<鉄道>危険度: ★
スカイトレインや地下鉄は、水かけ祭り開催中にいちばん安心して乗れる交通機関だ。冷房が強いので、全身が濡れていると凍える寒さとなる。その点だけ我慢は必要かもしれない。しかし、シーロム地区のサラデーン駅は異常と思えるほど混むので使用は控えたい。隣のチョンノンシー駅まで歩いて乗ったほうが、早く電車に乗れる。
<タクシー>危険度: ★★
水かけ祭りの期間中は外国人観光客がたくさん訪れることもあり、ボッタクリ運賃でフッかけてくることが多々ある。メーターを使用せずに走り出したら、しっかりメーターをオンにするよう伝えよう。できれば、ボッタクリ価格のタクシーには乗らないべきである。ボッタクリが常習的になって他の観光客の迷惑になるからだ。
<バス>危険度: ★★★
10~20バーツほどで乗れるので非常に経済的な移動手段だ。バス停に座っていても水をかけられるので、そのあたりはあきらめるしかない。また、バスの窓を開けていると水鉄砲による放水の的にされるので注意が必要だ。
<トゥクトゥク>危険度: ★★★★
三輪自動車のトゥクトゥクは、タイの情緒あふれる町並みを楽しませてくれるが、周囲から水かけ攻撃を大量に受けることになる。それでもいいなら良いが、濡れたくない人は絶対に避けるべき乗り物である。
<バイクタクシー>危険度: ★★★★★
非常に危険なので乗るべきではない。ただでさえ転倒事故が多く、危険といわれているバイクタクシーだが、水かけ祭りの期間中は特に危ない。道路が水で濡れており、さらに泥だらけになっている部分もあるため、スリップして事故になりやすい。また、バイクを狙った放水にも注意したい。
・アドバイス
旅のスタイルは人それぞれだが、15年以上前から水かけ祭りに参加している人から、いくつかアドバイスを聞き、以下にまとめてみた。参考にして自分スタイルの水かけ祭りをプラン立てしてみてはいかがだろうか?
<ホテル>
水かけ祭りをとこととん楽しみたいのであれば、シーロム地区またはカオサン地区を強く推奨する。しかし、シーロムはサラデーン駅を中心とした域がいちばん盛り上がり、カオサン地区ではカオサン通りが一番盛り上がるため、あまりにも「水かけ祭りど真ん中」なホテルを予約すると、水かけ祭り以外のアクティビティに支障が出る。
とはいえ、メインから離れすぎていると不便なため、500メートル以上距離があるホテルはオススメできない。よって、一番盛り上がる地区から300メートルほど離れた、路地に入ったホテルに泊まることを強く推奨する。たとえばカオサン地区でいうと、ワット・チャナソンクラーム寺院あたりのホテルが良い。カオサン通りが隣にあり、新築のホテルが多く、外国人観光客のために作られたホテルばかりだ。
また、水かけ祭りと「快適なバンコクの生活」を割り切って考え、スクンビット通り(繁華街)方面の心地よいホテルに宿泊するのも推奨できるプランだ。
<お金>
日本円やドルよりも、国際キャッシュカードやVISAデビットカードの使用を強く推奨する。どちらのカードも自分の日本の口座からリアルタイムに現金を引き出すことができ、使いすぎを制御できるうえ、大金を持ち歩くリスクを0にできる。また、VISAデビットカードは不正利用されてもすぐに利用法国が届いてわかるため、防犯にも強いカードである。
<店>
水かけ祭りは正月である。つまり、飲食店も服屋もなにもかも、閉店している店が多い。ガイドブックを見て「年中無休だから大丈夫」と思って行ったとしても、正月3日間は営業していないことがある。普通のタイを観光したいなら、水かけ祭りを避けるか、前後3日間ほど長く滞在することを強くオススメする。
<隣国>
ネパールは3月中旬にヒンドゥー教のホーリー祭(カラフルフェスティバル)が開催される。水かけ祭りが水をかけるなら、ホーリー祭は色粉を顔や身体にぬりまくるお祭り。水かけ祭りの楽しさを知った旅行者は、次の目的をホーリー祭にする事が多いようで、「ホーリー祭」のあと「水かけ祭り」に参加する長期間旅行者もいるようだ。
<飛行機>
水かけ祭りは非常におもしろい行事だが、正直、かなり疲労する。いざ帰国となると疲労がドッと押し寄せ、ゆっくりと帰国したい気分になる。そんなときはローコストキャリア(LCC)ではなく、タイ航空やANAなどのフルサービスが受けられる航空会社で帰国することを強く推奨する。
ほんの少しでも座席が広いだけで、その価値は大きい。料金をプラスしなくても食事が出て、客室乗務員のサービスの質も良い。もちろん乗り継ぎ便は推奨しない。直行便で帰るべし。水かけ祭りのあとのフルサービスキャリアのエコノミーは、ビジネスクラスの快適さに匹敵する。
・まとめ
ソンクラーンの期間中、水かけ祭りのためにタイを訪れる外国人は多いという。日本人よりも欧米人のほうが多いようだが、年々、日本人の姿を多く見かけるようになってきた。皆さんも、微笑みの国、タイの正月を体験してみてはいかがだろうか?
もっと詳しく読む: Photrip フォトリップ https://photrip-guide.com/2015/05/14/songkran/