チョコとんかつが食べられるらしい! そんなとんかつ屋『カツ吉』に行ったけど!?

katsukichi

百聞は一見にしかず。私は実際にチョコとんかつを注文して店員を観察すると共に、ブログで取り上げる価値のある料理かどうかをチェックしてみることにした。

平日の18時、私が店内に入るとカップルが1組だけ食事をしていた。2階もあるらしいが、1回はすべてテーブル席になっており、私は左奥のテーブル席に腰を下ろした。

この店の店主はシェフ自身なのだろうが、接客は店を仕切っていると思われる女将がしているようだ。

店内に掲示されているメニューの他に、お品書きがちゃんとテーブルごとに用意されている。お品書きを開き、チョコとんかつがあるかどうか探すと……、あった!! チョコとんかつが1850円とは、少々高額な気もするが、『平兵衛』のとんかつ定食だって2300円はするし、とんかつという料理にとって、2000円代は適正価格なのかもしれない。

ん? 待てよ。よく読んでみると、チョコとんかつの横に「要予約」と書いてあるではないか。前日までに予約しないと食べれないものなのか?
せっかく浅草まで来たのだ。なんとかお願いしてチョコとんかつを食べたい。私は女将を呼び、詳細を聞いてみることにした。

女将 何にしましょう?
筆者 チョコとんかつは、予約しないとダメですか?
女将 はい。予約が必要ですね。
筆者 どうしてもだめですか?
女将 無理です。
筆者 ……どうしても食べたいんですが。
女将 予約しないと絶ッッッ対に無理です!!
筆者 チョコとんかつを食べたかったんですよ。今予約して、明日来ます。
女将 無理です。
筆者 え? 今は予約できませんか?
女将 できますけど、1ヵ月前に言ってもらわないと無理です。
筆者 ええー!? つ、漬け込むんですか? チョコに……。
女将 最良の素材で最良の料理をお出ししたいのです。
筆者 なるほど……。1週間後とかじゃだめですか?
女将 無理です。1ヵ月必要です。

1ヵ月前から予約しないと食べることができないとんかつって一体……。漁に出てもなかなか手に入らない、珍しい魚を求めているわけではない。チョコを豚ロースで包んだとんかつを求めているのである。漬け込んだりしないのであれば、どこに一ヵ月間を必要としているのだろうか?

筆者 もしかして、ここに書かれている「要予約」のとんかつは全て1ヵ月待ち?
女将 そうですね。1ヵ月間待っていただきます。
筆者 どうしてですか?
女将 ……さきほども申しましたように、最良の素材を準備する必要があるんです。
筆者 準備に時間がかかるわけですか?
女将 そうです。
筆者 ……(弱ったなあ。1ヵ月先まで待てないし)。
女将 何にしましょうか?
筆者 この、あんずとんかつは?
女将 すぐに作れますよ。
筆者 変なとんかつなのにすぐできるんですか?
女将 すぐできます。
筆者 ……じゃあソレで。

「要予約」のとんかつは、チョコとんかつ、蕎麦とんかつ、あんことんかつ等の、ちょっと変なとんかつばかり。その変なとんかつを食べてみたかったのだが、1ヵ月も待てないので、仕方なく「要予約」じゃないけど、あんずとんかつを注文することにした。

待つこと約15分。あんずとんかつがテーブルに運ばれてきた。見た目はとんかつというよりも、ハムカツやササミフライなどの、西洋風フライのような衣をしている。粒子の細かいパン粉を使用しているからだろう。

食べやすいように適度な大きさに切られているとんかつの断面を覗いてみると、スライスされた豚ロースが幾十にも重なっており、そこにスライスされたあんずが入っていた。

本当に美味いのかな……。

不安がよぎるも、老舗なのだから美味しいはずだと心に言い聞かす。あらかじめ豚ロースに味がついているので、ソースはかけないで食べるのが、『カツ吉』流。すぐにでも未体験料理を食べたい衝動に駆られたが、私は食べる前に、カメラであんずとんかつを撮影することにした。

すると……。

女将 何してるんですか!?
筆者 あ、記念にとんかつを撮影しようと思って。
女将 駄目です。
筆者 駄目?
女将 あちらにをご覧ください。
筆者 ん?
女将 あの札に書かれている通り、店内では撮影禁止となっております。
筆者 すいませんでした。でも、どうしても記念に撮りたいのですが……。
女将 駄目です。撮影禁止になっております。
筆者 ……わかりました。すいません。

断固として撮影は許されなかった。失礼ながら、ちょっとウップンが溜まり始めていた。予約は1ヵ月待ちで、写真も絶対ダメ……。まあ、私が悪いのだが。

撮影をあきらめた私は、とりあえず食べて味を確かめることにした。あれだけ威張るのだから、絶対に美味しいはずだ(かなり逆恨み)。

率直な感想としてあんずとんかつの味を表現するならば、とてもあっさりしていて美味しかった。これはなかなかできる味ではないだろう。とても肉の風味があるにもかかわらず、余計な油や汁が垂れてこない。

一般の考えとして、とんかつは肉汁が多いほど美味しいと思われがちだが、実はそうではない。

確かに肉のうまみは肉汁が醸し出すものではあるが、あまりに肉汁が多いと、ギトギトのドロドロとした、サクサク感の失われたとんかつになってしまうのだ。

『カツ吉』のとんかつは、そういうポイントをちゃんとクリアしているといえるだろう。濃厚でありながらあっさりとした、相反する食感を同時に堪能させてくれるのである。この感動を、ちゃんと女将に伝えなければ!!

筆者 とても美味しいですよ!!
女将 そうですか。ありがとうございます。
筆者 私はグルメには素人ですが、これはなかなか作れない味だとわかりますよ。
女将 当店のとんかつは50種類ありますけど……

他店には絶ッッッッッ対にィィー真似できません!!

筆者 あー、でもこれはなかなか作れないですよね確かに。
女将 大手メーカーでも絶ッッッ対にィィィーーー真似できませんから!!
筆者 それってすごいですね。絶対にできませんか?
女将 絶ッッッ対です。当店だけですからこの味は。
筆者 なるほど。
女将 当店の味は、絶対に真似なんてできませんよ。
筆者 最後に少しだけ撮影していいですか?
女将 駄目です。

この女将の態度は、人によっては不快に感じる場合もあるかもしれない。しかしそれは、女将のとんかつに対する熱意と自信から出ているプライドであり、その味を堪能できる客として、『カツ吉』の女将には敬意を表すべきだと私は考える。

確かに、他では味わえない素晴らしい味を提供してくれるのだから。後日、知ったところによると、ここのシェフは素手を油釜に突っ込んで油の温度を調べるという、凄まじい特技をもっているという。やはり、普通の店ではなかった……。

業種:とんかつ
住所:東京都台東区浅草1-21-12
営業時間: 11:30~14:40/17:00~21:00
定休日:木曜
席数:38席(テーブル18席、座敷 約20席)

※記事内容は取材当時の情報です


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